五十肩(凍結肩)とは
50歳代を中心に明らかな外傷なく生じた痛みと関節拘縮を主徴候とする病態を呼びます。五十肩の病因は不明ですが、加齢による軟部組織(腱板など)の退行変性を基盤として、肩峰下包や肩関節に炎症性病変を生じ、関節包が短縮して肩関節の運動制限を生じると考えられています。この他に肩の痛みを生じる疾患としては、インピンジメント症候群、肩峰下包炎、石灰沈着性腱板炎、腱板断裂、上腕二頭筋長頭腱炎などがあります。
インピンジメント症候群、肩峰下包炎
図は、右肩の構造を前面から見たものですが、棘上筋腱(腱板)と肩峰下包とが肩峰に押しつけられて、痛みが発生する仕組みを現しています。これがインピンジメント症候群です。どの年齢層にも起こりますが、スポーツをする者に多く見受けられます。症状としては、徐々に発症する肩の挙上時の痛み、ひっかかり感、筋力低下やこわばり及び夜間痛が主な症状ですが、手を肩の高さより上で使用したときの運動痛が特徴です。(図:標準整形外科学第9版より引用)
石灰沈着性腱板炎
(図:標準整形外科学第9版より引用)
腱板断裂、上腕二頭筋腱炎
腱板断裂は、加齢や繰り返す機械的刺激、外傷などを原因として、腱板が断裂した状態です。高齢者では、転倒して手をついた場合や軽い肩の捻挫などで起こるようになり、自然に断裂したと思われるケースも多々見受けられます。主な症状は、肩の運動痛や夜間痛、肩が上がらない等です。また、断裂部には圧痛があります。上腕二頭筋長頭腱炎は、肩関節前面の痛みが主な症状で、上腕骨の結節間溝部に圧痛を認めます。肘を曲げた状態で前腕を外に回す動作で痛みが誘発されます(ヤーガソン徴候)ので、比較的診断は容易です。
(図:標準整形外科学第9版より引用)
症状と検査のポイント
肩関節の検査上大切なことは、左右の肩の状態を比較することです。痛みが一側の場合には、筋肉の萎縮や可動域の減少などを健側と比較して検査します。また、実際に患者さんの体を触って、圧痛や筋萎縮、断裂の有無などを触診します。五十肩の検査では、関節の動きを検査する可動域テストや痛みの誘発テストは特に重要で、拘縮の程度、痛みの発症角度など状態の把握には欠かせない検査です。
主な症状と検査のポイントは、
(図:標準整形外科学第9版より引用)
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■肩関節痛の理解を深める動画サイトです −参考−
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治療法
実際の五十肩の治療では、痛みや運動障害の程度、日常生活の障害などでその治療が変わってきます。一般的には、温熱療法、運動療法、はり灸治療、生活指導などが主な治療になります。特に凍結肩の場合は、リハビリを積極的に行うことで改善が見られることから、当鍼療室では重点的に行っています。
実際の治療ではまず、超音波にて障害(損傷)部位を確認します。続いて鍼麻酔と頸部神経根刺激または、肩甲上神経根刺激を同時に行います。これと並行して超音波で確認した障害部位に散鍼を行います(なべく得気を感じるように)。 |
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