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痺れ(しびれ)とは

 
痺れ(しびれ)は麻痺の一種で、一般的には知覚神経(触覚、痛覚、温度覚)の障害で起こります。感覚的には、ビリビリする、ジンジンする、皮膚に触っても感じが鈍いなどの状態です。日常的にも正座をした後の足のしびれや肘枕のあと手が”ビリビリ”とした経験は、誰しもあると思います。これらの原因は、血行障害による一時的なものであったり、末梢神経が圧迫された時るものです。この他にしびれには、脳疾患などの重病から起こるものもあり注意が必要です。
また、しびれと痛み、麻痺には深いつながりがあり、痛みが起きたあとしびれや麻痺が現れたり、痛みが先に出現するのが一般的です。つまり、しびれや麻痺が起きる前に必ず痛みがあると言っていいのです(脳に原因がある場合などを除いて)。大事なのは、しびれの段階にきてしまった場合、麻痺など症状が進行して改善が難しくなる前に、早急に何らかの治療を受けたほうがよいということです。

気になるしびれその原因は・・・

しびれの原因は脳から末梢神経まで幅広く、全身の病気が隠れていることもあります。しびれを引き起こす病気はとても多いのです。また、早期発見できるかどうかが、その後の病気の重症度に大きく影響するのも、しびれを伴う病気の特徴です。「手も動くし、いつか自然に治ると思っていた」、「はじめは軽かったしびれが強くなり、痛みも出て動かしにくくなった」という患者さんも少なくありません。しびれを伴う主な病気と、しびれの原因を知り、適切な治療を早めに受けましょう。しびれの原因は多岐にわたりますが、大きく以下の3つに分けられます。

  中枢性のしびれ ……主に大脳が原因で起こる
   主に大脳が損傷、障害を受けしびれを感じます。場合によっては、重篤な障害を残すこ
   ともあります。
   脳梗塞、脳出血、脳外傷、脳腫瘍など

  脊髄性のしびれ ……脊髄神経や脊髄を取り囲む骨や靭帯などが原因で起こる
   脊髄神経や脊髄を取り囲む骨格組織が原因で起こるしびれです。一般的な手や足のしび
   れの多くは骨や靭帯、椎間板の変性が原因で 起こる脊髄性です。
   頚・腰椎椎間板ヘルニア、後縦靭帯骨化症、脊柱管狭窄症、脊髄空洞症脊髄腫瘍など

  末梢神経性のしびれ……末梢神経に影響する外力、血管や代謝の病気
  
末梢神経が障害を受けることが原因でしびれを感じます。
    主な原因は
   @骨や靭帯が神経を圧迫して、しびれが起こる
    
坐骨神経痛、胸郭出口症候群、正中・尺骨神経痛など
   A末梢神経の栄養血管が詰まり、神経の酸素・栄養不足からしびれが 起こる。
    
閉塞性動脈硬化症、バージャー病など  
   B代謝異常が原因で神経が変性を起こし、しびれる
    
糖尿病、ビタミンB1欠乏など
   C末梢神経が原因不明に変性を起こし、しびれが起こる
    
ギランバレー症候群、アミロイドーシスなど
 
 
 ※鍼灸治療では、主に脊髄性と末梢性のシビレが治療の対象となります。


神経痛に対するアプローチ

鍼灸治療を訪れる患者さんの訴える痛みには、主に脊椎由来のものや関節由来のものが多くみられます。その症状の診断は、日常診療において常に私たちを悩ませています。ここでは、実際の鍼灸治療において注意すべき痛みについてまとめてみました。

 神経根症候
  神経根障害が疑われるときは、次の4徴候を満たしているかどうかで判断できます。
  1)その神経根が支配している領域に痛みがある
  2)知覚の分布図に一致した知覚障害がある
  3)神経支配を受けている筋肉に運動障害がある
  4)深部腱反射の異常(低下)がみられる

 脊髄神経後枝を介する皮神経の痛み(cellulalgia)
  脊髄後根は神経根となって上下肢に末梢神経を送りますが、椎間孔から出てすぐに背側の筋肉、
  皮膚につながる外側枝と内側枝を出します(図上)。これが皮神経となる枝で皮膚の知覚異常や
  皮膚上に痛み(cellulalgia)を伝えます。cellulalgiaはすべての知覚分布域に発現するわけでは
  ないですが、代表的な部位を図に示しました(図下)。その発現にはpinch-rollテストを用いて
  検査します。
 
 
             図:「整形外科プライマリケアハンドブック」より引用

 トリガーポイント(筋、筋膜性圧痛)症候
  トリガーポイントは、筋を圧迫したときに感じる異常に敏感な直径1cm程度の小さな領域です。
  ときには硬結した腱様の組織を触れることもあります。トリーポイントは筋、筋膜性の圧痛です
  から、その神経支配はその筋肉固有の神経髄節によります。一つの筋肉が複数の髄節から支配を
  受けることがあり、トリガーポイントから髄節を特定するのは困難なことがあります。代表的な
  トリガーポイントをあげてあります(図)。
 
 
              図:「整形外科プライマリケアハンドブック」より引用 

 関節機能異常による痛み
  関節包、腱起始部などの刺激受容器を介した痛みが、脊椎の神経分布とは異なる痛みを生じるこ
  とが知られています。たとえば胸鎖関節から生じる上肢や側頭部の痛み、胸肋関節からの上肢の
  痛み、腰椎椎間関節から生じる坐骨神経痛様の痛みなどが実験的に証明されています(図)。こ
  れらが外傷性ではなく機能異常、すなわち関節の滑りが障害されたときに関連痛が起きることが
  わかっています。
 
 
              図:「整形外科プライマリケアハンドブック」より引用
 内臓由来の痛み
  鍼灸治療に訪れる腰背部痛または下腹部痛などが、ときに内臓由来の痛みと区別しなければなら
  ないときがあります。一般的には整形外科的疾患の痛みは、運動痛や可動域制限、触診による痛
  みの部位の存在などが特徴ですが、しかし、痛みの強さに比べてこれらの所見を欠くときは、内
  臓痛を疑わなければなりません。
  1)心臓痛(狭心症)
   心臓痛は胸痛として表現されることが最も多く、他の部位と合併して表現されることもあり、
   その場合は、頸肩腕症候群と似た部位に痛みが出現します。しかし、その頻度はそれほど多く
   はありません。

  2)泌尿器からの痛み
   泌尿器科疾患に関連した痛みは腰背部、腰部、下腹部に出現しますが、初期に患者さんが腰痛
   として考えて整形外科に受診するケースは多々あります。尿管結石による疝痛発作は、痛みの
   他に血尿、結石排出の3徴候で尿管結石の判断がつきます。この痛みはまず第11、12胸椎、
   第1腰椎の支配域に痛みを生じます。 さらに臀部上部、鼠径部、大転子部に痛みが放散します
  (図)。

  3)婦人科的骨盤痛
   女性の月経周期による痛み、尾骨痛、下腹痛など婦人科的な痛みです。
 
 
                図:「整形外科プライマリケアハンドブック」より引用
 反射性交感神経性ジストロフィー(RSD)
  RSDとは反射性交感神経性ジストロフィー(reflex sympathetic dystrophy)の略名です。
  RSDの原因は明確ではありませんが、交感神経が関与していると考えられています。たとえば外
  傷による交感神経反射である四肢の血管収縮が異常に強いとき、局所に虚血を生じて、それが大
  きな痛みを引き起こし、さらにそれが交感神経反射を倍加して、虚血を起こすという悪循環が形
  成されます。症状は疼痛、腫脹、関節硬縮、皮膚の変色の4徴候です。
  このRSDは,外傷患者の治療中に突然遭遇するきわめて難治性でかつ原因不明の疾患ですので、
  治療が遅れると廃用性の手足に陥る危険性をはらんでいます。通常の外傷治療でもいつでも発生
  する可能性がありますので、疑わしい場合にはただちに医師の受診をおすすめします。



神経痛/しびれの検査

しびれを主訴として患者さんが来院する場合、基礎的疾患の一つとして糖尿病の有無を考慮する必 要があります。糖尿病では動脈硬化のため虚血が起こり、手足の末端からしびれが始まるいわゆる 手袋靴下型の神経障害がみられます。
血管性の原因を除きしびれは麻痺の前段階ですが、まだ神経の機能を失ってはいない状態です。痛 覚の神経が障害されると脊髄部からの遅い痛みである”じんじん”とした異常感覚が出現してきます 。この段階がしびれであり、これを超えると異常感覚も消失し、次いで運動神経線維の障害に移行 します。したがって、しびれを訴える場合、運動神経の障害もあるかどうかの確認が必要になって きます。具体的には、次の項目で検査をしていきます。
 1)神経学的障害の検査
   末梢神経の分布に沿ってしびれがあるのか、それとも脊髄の髄節レベルに一致したしびれなの
   か区別する必要があります(図「デルマトームと皮神経」参照)。

 2)運動麻痺の有無
   しびれがあって末梢の運動神経麻痺を起すときは筋力低下から始まり、筋肉が痩せていきます
   。たとえば手根管症候群による正中神経障害では、母指と示指によるピンチ力の低下を訴え、
   ボタンが止めにくくなったということがあります。

 3)知覚障害の検査
   触覚、痛覚障害が予想されるときは、末梢神経の責任分布や脊髄の髄節レベルを検査すること
   により、障害の範囲を知ることができます(図「デルマトームと皮神経」参照)。

 4)脊椎部(頸椎・腰椎)の痛みに対して
   頸椎・腰椎の関節可動域
   棘突起の圧痛
   棘間靭帯の圧痛
   pinch-roll テスト(椎間関節由来の痛みの部位を同定できる)
   トリガーポイント(肩こりでは腱様組織を触れることがある)
   頸椎椎間関節(ファセット)の触診(片側だけに圧痛があれば椎間関節痛と特定できる)
   放散痛が上肢にある場合(根障害の4徴候を順番に調べてゆく)
   脊髄症状(手の巧緻性障害、よろめき歩行などが見られる場合、脊髄より上位の障害が疑わ
    れるので医師の受診が賢明)

 5)神経絞扼と血管の圧迫テスト
腕神経叢と鎖骨下動脈は@前斜角筋と中斜角筋の間、A鎖骨と肋骨の間、B小胸筋の下層を走行しますが、それぞれの場所で絞扼と圧迫を受ける可能性があります。これらをまとめて胸郭出口症候群と称し、神経障害と血管障害に基ずく上肢痛、上肢のしびれなどを訴え、頸肩腕痛を生じる疾患の一つです。診断は自覚症状と病歴からある程度推定可能ですが、徒手的に症状を誘発する以下のテストを行うことでより正確な診断ができます。


   ■
Morler テスト:鎖骨上窩で腕神経叢を指で圧迫すると圧痛、前胸部への放散痛を生じる
   Adson テスト:前斜角筋の緊張が鎖骨下動脈を圧迫し、このとき橈骨動脈の減弱をみる
   Wright テスト:座位で両肩関節を外転90°、外旋90°、肘90°屈曲位をとらせると橈骨動脈
    の脈拍が減弱する

 実際の治療場面では、神経性の障害なのか、血管性の障害なのか悩むことがありますが、腰部の
 脊柱管狭窄症と閉塞性動脈硬化症を例にその違いを図に示しました。
                                    - QLife Proより -

   

      デルマトーム(左手)と皮神経(右手)      

                    - QLife Pro より - 


神経痛/しびれの治療法

 神経痛・しびれに対する鍼灸治療は、まずその障害を起こしている神経の系統的検査・評価によ り、その障害髄節の同定が必要です。そのためにも正確な検査が求められます。一般的には頸腰椎 由来の痛みでは、脊椎の運動障害や運動痛がみられますが、その運動制限やそれによる痛みがなく、夜間痛があるときは他の内科的疾患からの放散痛も考慮する必要があります。当鍼療室では、はり治療 (低周波通電療法)を中心に治療を行っていますが、神経に直接刺激するのでその刺激量については 細心の注意が必要である。

頸椎症や腰椎症の神経根症状で上肢や下肢に放散痛や痺れが見られるとき用いる方法。
椎間孔から神経根が出てくるところに鍼を刺入しパルス通電を行う方法です。

トリガーポイントは、局所の疼痛や別の部位に関連痛を起こす筋肉内のポイントです。
頚部にある交感神経節に生体深達性の高い高密度近赤外線を照射する治療法です。

脊椎症(頸・腰椎症)に起因する症状の軽減を図ることを目的とします。
経皮的末梢神経電気刺激は、経皮から電気で末梢神経を刺激して鎮痛させる療法です。

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